カウンセリングの代表的な技法である“傾聴”について
今回のコラムでは、カウンセリングの技術や技法について解説を行います。
カウンセリングの代表的技法の一つとして“傾聴”があります。
傾聴とは
人の話をただ“聞く”のではなく、また自分の聞きたいことを“訊く”のではなく、相手が話したいこと、伝えたいことに対して、肯定的な受容を行い、感情に共感するように“聴く”行為や技法を指します。そのことによって相手への理解を深めると同時に、相手も自分自身に対する理解を深め信頼関係を築いた上で、話し手が納得のいく判断や結論に到達できるようになることが傾聴のねらいです。
聞く(hear)・・・聞こえる、聞いて知る、声が耳に入る
聞く側が受け身。「こころをこめて」とか「熱心に」という能動的な要素は少ない
訊く(ask)・・・尋ねる、問う、取り調べる、責める
訊き手が必要としていることを相手に「質問」して、答えを要求する
訊く側が能動的で訊かれる側は受動的
聴く(listen)・・・聴こうと努力する聴き方で、こちらから積極的に耳に傾けるという意味がある
聴く側が話し相手に積極的な関心を示している
私自身、カウンセラーになるための訓練を受けるまで、聞き上手であると自負していました。しかし、実際には人の話を訊くことはできても、聴くことができていなかったことに気づかされました。自分の訊きたいことと、訊く必要のないものをふるいにかけていたのです。これも実践して初めて理解できました。
傾聴の具体事例として
例えば、話し手が「仕事が忙しくて大変だ」と言った時に、単に「仕事が忙しい」のかや「大変」なのかと理解するだけでは共感は不十分で、傾聴したことにはなりません。
話し手の深層にある感情や心理を知るということは、仕事が忙しいことで大変だということばの背景にあるものは何か、時間に追われ「イライラ」するのか、目の前にある業務がこなせるか「不安、心配」に感じているのか、それとも自分の大変さを上司や周りの人が理解してくれず「やりきれない」と感じているのか、業務を効率良くこなせない自分自身に対して「情けなく」感じているのか等。
ここまでの感情を知ることで初めて、相手の感情や心理を自分自身も同じように感じることができるのです。そのことで話し手と聞き手が同じ目線で更なる深層にある心理や目の前の問題に向き合うことができるのです。これが傾聴の効果です。
更に傾聴の効果として、話し手自身が「仕事が忙しくて大変だ」と話しても、上記に記載したような深層にある感情を明確に自覚できていないことがあります。傾聴することにより、話し手自身が自分の深層にある感情や心理に気づき、問題解決の糸口を自分自身でつかむことがあります。
私自身を振り替えてみてもイライラしているとき、何がそうさせているのかわからない時があります。そのような場合には傾聴の効果がありうるということです。
次回以降のコラムでも引き続き、カウンセリングの技術や技法について解説を行います。
<2017年2月 代表取締役 内山 三朗 記>