仕事を科学する分析手法“IE手法”
今回は、前回のコラムで記載しました“目標”や“現状”を正しく認識する方法について解説を行います。“目標”や“現状”を具体的に、そして定量的に把握する手法のひとつとして、IE手法の解説を行います。
IE手法の概要
「IE」とは、「Industrial Engineering」(インダストリアルエンジニアリング)の略です。
「経営目的を定め、それらを実現するために、環境(社会環境及び自然環境)との調和を図りながら、人、物(機械、設備、原材料、補助材料及びエネルギー)、お金、及び、情報を最適に設計し、運用し、統制する工学的な技術・技法」 言い換えると、人・設備の稼働の効率化、ものの動き(物流)の改善、レイアウトの改善など、ムダやロスを省くために活用できる科学的分析手法です。
このIE手法を用いれば、どのように“目標”と“現状”を正しく認識できるかについて紹介します。
IE手法の一例
人の動作スピードについて、「彼は機敏だ!」「彼は動作が遅い!」と感じたことは誰しもがあると思います。しかし、ここでの「機敏」や「遅い」は抽象的で、認識している内容が漠然としています。人それぞれの価値観に基準が依存するため、周りの人にも伝わり難い状態となります。そのような場合に対して、IE手法には人の動作速度についての“基準(ものさし)”があり、目標や現状を数値で捉えることができる分析手法があります。その分析手法を“レイティング(rating)”や“レベリング(leveling)”と言います。
<例> 人の動作の一つである歩行について
“時速4.8km”で歩行する動作速度を“ペースレイティング100”という基準になります。
※ペースレイティング100とは、着実で注意深く急がない動作速度
活用の仕方としては
ペースレイティング100を基準として目標のペースレイティングをいくつにするのか。
また現状のペースレイティングはいくつなのか。その差が発生する原因は何かを追求し、対策を打ちます。単に「歩くのが遅い!」ではなく
「目標のペースレイティングは125(時速6.0km)」
「ただ現状のペースレイティングは110(時速5.3km)」
定量的に“目標”と“現状”を捉えた方が問題も明確化されます。更なる問題の深堀や原因追求もしやすくなります。
歩行については速度(km/時)といった基準(ものさし)があるので、ペースレイティングそのものの必要性は感じられ難いのですが、歩行以外の動作である“手の動き”については、ペースレイティングの重要性が出てきます。その“手の動き”については下記の通りです。
※それぞれペースレイティング100の動作速度となります。
・52枚のトランプカードをある決められた配置図の上に30秒で正確に配り終わる時の手の動作速度
・30本の木製のピンを、いっぱい入っている容器から両手で同時に2本ずつ取って、差し板の穴に入れるのに25秒で行う時の手の動作速度
次回のコラムでは「レイティング」以外のIE手法について、いくつか紹介します。
< 2017年4月 代表取締役 内山 三朗 記 >
上記コラムに関連する研修<研修パンフレット>
研修名:現場力を鍛えるIE実践研修
研修名:問題発見力(気づきの感度)向上研修<改善活動成功のカギ>