仕事を科学する分析手法“IE手法”
前回のコラムではIE手法の“レイティング”を紹介しました。この分析手法は人の動作速度をペースレイティングという“ものさし”で表現することにより、“目標”と“現状”を具体的に、定量的に把握することができ、そのことにより問題を正しく認識できるようになります。今回はIE手法の中でも使用頻度の高い3つの分析手法を簡単に紹介します。
<ワークサンプリング>
人や設備の稼働状況を分析する手法です。稼働・非稼働をある定義に基づき区分し、それぞれの区分した項目がどのくらいの量があり、全体の中での割合をサンプリングデータを基に数値で表すことができます。そのことにより、どのようなムダがどのくらいあるのかを見出すことができます。
<ラインバランス>
工程の能力バランスを分析することにより、工程内で一番弱い工程(ボトルネック工程)を見出したり、その他の工程ではどのくらい余裕があるのかを分析する手法です。各工程をある基準(工程能力)の数値で表すことにより、どの工程から優先的に、どのくらい改善すべきかを分析することができます。
<連合作業分析>
人と設備、人と人との最適な稼働の組み合わせを見出す分析手法です。人や設備それぞれの稼働の相互関係を具体的に、そして定量的に表すことにより、どのようなムダがあり、どこをどのように改善すれば良いのかを分析することができます。
上記の各手法を含めたIE手法により、目標(あるべき姿)と現状を具体的に、定量的に表すことができ、問題が明確になります。この手法を活用すれば問題発見力を高めることができます。そして、そのIE手法を活用できる場面として、IE手法は「工程管理」の技術の一つで、工場内の「工程」や「作業」を分析する手法です。但し、決して工場内の直接作業だけでしか活かせないものでもありません。間接スタッフの職場でも、その「プロセス」や「業務」の分析にも活用できます。よって、現在は製造業だけでなく、サービス業、医療、行政などでも活用されています。また極端な事を言いますと日常生活でも活用することが十分できます。先程説明をしました“連合作業分析”を料理に活用した事例を紹介します。
図1.ある日の献立 5品
図1の献立の5品すべてが同時に食卓に揃うようするためには、時間がかかるものは早めに着手し、手間(負荷)がかかるものは、事前に下ごしらえを行います。また炊飯のように最初はお米や水の計量、お米研ぎに手間はかかるが、炊飯器のスイッチを押した後は何も手を加えなくても、炊飯器が自動的に調理をしてくれます。このように複数の献立の品を同時並行で調理する際には、着手のタイミング、手間のかけ方、取り置きができるできないを考えながら、調理を行います。その状況を連合作業分析で表現しますと図2のようになります。
図2.調理手順の連合作業分析
図2の連合作業分析により、すべての献立の品をどのようなタイミングに着手し、どのくらいの手間(負荷)がかかるのか、どこで手間が重複しそうなのかなどが見えてきます。各献立の品、それぞれについての調理手順は、料理本にあります。しかし、複数の献立を同時並行に調理するための手順(図2の連合作業分析)はあまり見たことがありません。このことは職場においても同様のことが言えます。各業務や作業単体の手順は決まっていて手順書があったとしても、日常的にはそれらを同時並行で連続して行っていることが大半であり、その中に各人のノウハウや、ムダやロスが存在します。それらを今回の連合作業分析を活用することにより、“あるべき姿(目標)”や“現状”を表現することができるのです。
以上のようにIE手法は活用次第であらゆる場面で活用ができます。各分析手法の詳細な説明は割愛しましたが、分析手法そのものはそれ程、難しいものではありません。大切なことは数多くある各手法の中で、どの手法を、どのタイミングで、どのように活用するのかということです。よってIE手法をはじめとする科学的分析手法は、単に机上での学習だけではなく実践的に習得することが必要とされます。
次回のコラムでは、IE手法の外部講習を社員に受講させたにも関わらず、職場内での実践活用に至らないとクライアントよりお悩みを伺うことが多々あります。その原因について、IE手法を習得する目的や意義に着目しながら解説を行います。
< 2017年4月 代表取締役 内山 三朗 記 >
上記コラムに関連する研修<研修パンフレット>
研修名:現場力を鍛えるIE実践研修
研修名:問題発見力(気づきの感度)向上研修<改善活動成功のカギ>