学校教育では育んで来れなかった問題発見力
問題を問題として気づけない。問題を発見できたとしても、その問題は他責ばかり。など問題発見力(気づき力)については、多くの企業で問題視され、その向上に向けた試行錯誤がなされています。学校教育において、問題発見力はどのように考えられ、その向上に向けた教育がなされているでしょうか。その点を見つめることにより、企業での問題発見力の育成のあり方を今回と次回のコラムで考えていきたいと思います。
なぜ企業にて、ここまで問題発見力(気づき力)が問題視され、その育成に時間も労力もかける必要性があるのでしょうか?
自分自身を振り返った時に、学校の授業や試験で多くの問題に向き合ってきました。しかし、現実は“問題の意味”も知らずに問題を解いてきました。何を学生時代に学んできたのでしょうか。
“学業で向き合ってきた問題”と、社会人になって“企業で向き合う問題”とは違いがあるのでしょうか?
図1.与えられた問題と自ら見出す問題
“企業で向き合う問題”とは、これまでのコラムでも述べてきました様に、本来あるべき姿やありたい姿(目標)に対して、現状がどうで、その差は何か、またその差を埋めるために阻害するものは何かが“問題”となります。そして特に目標とするあるべき姿やありたい姿は、企業が置かれている状況や時期、そして組織や個人により変化します。よって自らがあるべき姿(ありたい姿)を描きつつ、現状との差を見出すといった“能動的な問題設定”が必要になります。しかし“学業で向き合ってきた問題”とは既に3+3=?といった具合に問題そのものは最初から設定されているため、問題設定(発見)力は必要とせず、解を導き出す問題解決力が求められることになります。よって問題設定について言えば、“受動的な対応”となってしまいます。
つまり“企業で向き合う問題”とは“自ら見出し、設定する問題”で、学業においては“与えられた問題”となります。また英語(QuestionとProblem)で表現するとその違いは一目瞭然です。
では学生時代に“企業で向き合うような問題”に全く向き合わなかったのかというと、そうでもありません。例えば、進路を決める時は、将来になりたい自分や行きたい学校などの目標を描き、それに対して現状はどうなのか、目標を達成するためには何をしなければならないのか。まさしく“自ら見出す問題”に向き合うのです。ただそれも流れのままや周りが言うとおりに進路を決めていたりすると問題に向き合う機会も少なくなります。またそのように進路を考える時にどれだけありたい姿と現状を意識し、行動するような進路指導があったのか。更にそのように問題を自らが設定し、他責にすることなく、深堀することのプロセスを学習させる指導があったのかは、学生を取り巻く環境により大きく依存していたのではないでしょうか。
但し、学校教育も大きく変化しています。1970年代より現在に至るまで、学校教育の学習指導要領は変化しており、特に大きな変化としては、“ゆとり教育”に代表される“総合的な学習の時間”が2000年(平成12年)より段階的に開始されたことです。このような教育方針の変化の中で、問題解決力だけでなく、問題発見力(問題設定力)も養うような取組がどのように実施され、その結果はどのようなものだったのかについて次回に解説を行います。
< 2017年4月 代表取締役 内山 三朗 記 >
上記コラムに関連する研修<研修パンフレット>
研修名:問題発見力(気づきの感度)向上研修<改善活動成功のカギ>
研修名:問題発見力(気づき力)の高め方研修<管理者の関わりが大きく影響>