ヒューマンエラーとは

今回より数回に渡ってヒューマンエラーについて解説を行います。ヒューマンエラーの定義やその発生のメカニズム、そして企業間におけるヒューマンエラーに対する見方・考え方の違いについて解説を行います。

世の中には、ヒューマンエラーが原因で自動車事故、航空機事故や医療事故など、各企業内でも事故や労働災害などが発生しており、自動車事故で言えば9割以上、企業内で言えば6割以上がヒューマンエラーによるものと言われています。

直近で言えば、2017年3月27日に高校生らが参加した登山講習中での雪崩事故がありました。この雪山での事故は高校生と教諭ら48名が雪崩に遭い、40人が負傷、大田原高校山岳部の生徒ら8人が亡くなるといった惨事になりました。そして、その原因は時が経つにつれ、数々の人為ミスが重なった結果であったことがわかってきました。

皆さんの周囲では、ヒューマンエラーは発生していますか?またそのヒューマンエラーの発生が事故や労働災害、品質不具合、その他、業務や作業ミスによる効率低下などに影響を及ぼしていませんか? そして、それらのヒューマンエラーに対して効果的な対策は打てていますか?

そもそもヒューマンエラーとは何でしょうか?今回のコラムではその定義から説明を行います。

ヒューマンエラーとは、
(本来の)目標達成に必要な認知・判断・行動プロセスから逸脱した人のプロセス

車の運転で例えますと、
車の運転は認知・判断・行動の連続です。例えば、見通しの悪い交差点内に進入する際も認知・判断・行動のプロセスを経るのです。そして最適な認知・判断・行動(本来の目標達成に必要な認知・判断・行動)のプロセスが次の通りだとします。

<認知>
見通しの悪い信号のない交差点に入ることを認識する

<判断>
このままの速度で交差点内に入ると、事故を起こす可能性を予測し、速度を落とすことを決める

<行動>
アクセルペダルから足を離し、ブレーキをかける

上記の認知・判断・行動のプロセスが最適であったとして、もしそのプロセスの中で逸脱した『認知』『判断』『行動』があれば、それをヒューマンエラーと言います。

例えば、
見通しの悪い信号のない交差点だと『認知』したけども、大丈夫だろうと『判断』し、速度を落とさずに交差点内に進入した『行動』。

この場合、ヒューマンエラーは、『判断』となります。

ここでヒューマンエラーの難しいところとして、ヒューマンエラーが発生したからと言って、事故につながるとは限りません。ヒューマンエラーが発生していたとしても、事故が発生しないために、ヒューマンエラーが発生していること自体本人が気づかないこともあります。

頻繁に事故が発生しているため、地元の人なら絶対に速度を落とす交差点でも、そのようなことを知らずに大丈夫だろうと速度を落とさずに交差点内に入り、たまたま他に車もバイクも無く、ヒヤリとすることも無かった場合、次回も同じように速度を落とさずに交差点に進入する可能性があります。

この事例は冒頭で説明をしました雪崩事故にも言えることです。講習の責任者である教諭は山岳部顧問を二十年以上務めたベテランでしたが、これまでの自身の経験を基にした判断が悲惨な事故を招くことになってしまいました。

企業内でも同様のことが発生している可能性があります。このような状況に対する対策等、ヒューマンエラーに関して次回以降のコラムにて解説を行います。

< 2017年5月 代表取締役 内山 三朗 記 >