対策に差が出るヒューマンエラーの向き合い方④

前回のコラムでは、ヒューマンエラー発生のメカニズムについて、人の情報処理プロセスを基に解説しました。前回のコラムの結論として、情報処理プロセスのどこの過程でエラーが発生したのか、そして発生の原因は何かを更に深堀する必要がありますと述べました。そのためには、“ヒューマンエラー発生のメカニズム”や“人の特性”について更に理解を深める必要があります。今回のコラムでは、感覚・知覚・認知といった入力過程でのエラーについて、その発生原因となる人の特性について解説します。

入力過程に大きく影響を及ぼす人の特性の一つとして“文脈効果”があります。ご存知でしょうか?

文脈効果について、非常に有名な事例を紹介します。

<一般事例①>
次の文字を読んでみてください。

<解説>
上記のA、B、Cの『B』と、下記の12、13、14の『13』は同じ文字にも関わらず、それぞれ『B』と『13』と読めてしまいます。

<一般事例②>
次の文章を読んでみてください。

ひと には すらばしい のうりょが そなわてるいから です。

<解説>
正しくは、下記の通りですが、多少文字が誤っていても、読むことができ、意味を理解することができます。
「このように よめてしまうのは、ひと には すばらしい のうりょくが そなわっているから です。」

文脈効果とは

刺激の知覚過程において、前後の刺激の影響で、対象となる刺激の知覚が変化する現象のことを言います。つまり物事の流れの中で都合良く(流れに沿うように)物事は判断されてしまいます。この文脈効果がヒューマンエラーとして発生する際には、思い込み、思い違いにつながってしまいます。前後の刺激に影響されてしまい、本来の対象を見失ってしまうのです。

文脈効果のメリット・デメリット

前後の刺激によって、対象とする知覚が期待とする内容となれば、それはメリットとなりますが、それが期待とは異なるものへと影響されると、デメリットとなってしまいます。

いずれにせよ。人は文脈効果により前後の刺激の影響で対象とする知覚が変化しやすいと言う特性があります。

ヒューマンエラー発生の実態把握や原因追求の際、そしてその未然防止にも、このような文脈効果を考慮することは必要です。今回のコラムでは職場で発生する文脈効果の具体事例は割愛しますが、日々発生し得ることですので、一度、どのような文脈効果が職場内にあるか議論しておくことも、ヒューマンエラー対策に役立つでしょう。

次回のコラムでも、その他の ヒューマンエラー発生に影響を及ぼす“人の特性”について解説を行います。

< 2017年7月 代表取締役 内山 三朗 記 >

上記コラムに関連する研修<研修パンフレット>

研修名:結果につながるヒューマンエラー対策