他責思考による問題認識を改善するために
前回のコラムでは他責の思考に至る経緯について解説を行いました。今回はその他責の思考とならないために、どのように問題に向き合い、問題を捉えて行くのか、問題認識のアプローチについて説明します。
問題を解決していく全体のステップとして、一般的なものがQCストーリーに基づいた問題解決の8ステップやトヨタ流の問題解決の8ステップがあります。
<QCストーリーの問題解決の8ステップ(原因追求型)>
Step1.テーマ選定
Step2.現状の把握と目標の設定
Step3.活動計画
Step4.要因の解析
Step5.対策の検討と実施
Step6.効果の確認
Step7.標準化と管理の定着
Step8.今後の計画
しかし、このステップに基づいて進めていけば、問題解決ができるのかというと、なかなかうまく進めることができません。その一つの要因としてあるのが、これまでのコラムでも解説してきてきた問題認識の段階、8ステップで言えば、Step1からStep2の段階で躓(つまづ)いてしまうのです。
それでは次にこの問題認識の段階での阻害要因のひとつである“他責の思考”を改善する手順について解説を行います。
<“他責の思考”を改善するためには>
1.問題を正しく認識することの重要性を知ること
2.問題の意味を理解すること
3.目標と現状を明確にし、問題を正しく認識すること
4.問題を分解すること(問題を分解し、原因追求を行うこと)
5.問題認識から対策案立案までの各プロセスを分割すること
1.問題を正しく認識することの重要性を知ること
問題解決を行う際に、自分自身が問題を正しく認識できているかどうか?をあまり意識することなく、条件反射的に他責として結論付けているケースが非常に多いと感じます。しかし、問題認識は問題解決(改善)のすべての始まりで、ここを誤るとその後につながる要因解析や対策検討などすべてのステップの内容を誤ることとなります。
・問題が解決できるかどうか
・成果につながるかどうか
・成功体験を得、更なる問題解決の動機付けになるかどうか
・問題解決を通して、人の意識・行動改革が起こり、人が成長するかどうか 等
一つの問題解決は、目の前の問題解決だけにとどまる事なく、問題や仕事に対する向き合い方等、様々なことに影響を及ぼす可能性を秘めています。よって、他責の思考は自分自身の成長をも阻害する可能性があります。その重要性に気づくべきです。前回のコラムにも記載しましたが、いかに問題認識の重要性や自分自身の問題認識の内容や傾向など、自分自身の実態を知る機会を設けることが重要です。
2.問題の意味を理解すること
問題の意味については、以前のコラムでも解説した内容ではありますが、下図のように問題とは目標(あるべき姿)と現状との差(ギャップ)を意味します。他責の思考を回避するためにも、まずは問題の意味を理解し、問題発生の原因や対策実施の責任部署を追及することに注視するのではなく、問題そのものに目を向けるようにします。
図1.問題の“意味”
3.目標と現状を明確にし、問題を正しく認識すること
問題が漠然としたり、他の人と問題認識の内容に違いが生じるのは、目標か現状のどちらか、又は両方ともに認識が漠然としていたり、組織内でそれぞれの認識にズレが生じているからです。目標や現状は具体的に、そして定量的に把握し、それらを組織内で共有することが大切なことです。
4.問題を分解すること(問題を分解し、原因追求を行うこと)
問題は大抵の場合、複数の問題が複合しており、分解する事ができるのです。しかし、この問題を分解することなく捉えてしまうと、自分自身だけでなく、他人や他部門も関わってくる問題となります。そして、どうしても他人や他部門が関わる問題になるとそこだけが注視されがちです。対策としては問題を分解し、すべてを他人や他部門の責任とするのではなく、自身が対応すべき問題と他人や他部門に協力をしてもらう問題に区分することが大切です。そのために、目標や現状をあらゆる視点、例えば、内容、レベル、時間軸 等で層別すると問題を分解することができるでしょう。
図2.他責思考の問題認識の改善
5.問題認識から対策案立案までの各プロセスを分割すること
つい実態把握を行い、問題認識を行う場面にも関わらず、人は対策を考えてしまうものです。問題認識する時には問題を把握することに終始することが重要です。よって問題認識、原因追求、対策検討を行う会合を時間や場所を分けて開催すると良いでしょう。一定の効果はありますので、一度チャレンジをしてみてください。
以上の点を考慮して問題解決に取り組んで頂くと、知らないうちに他責思考になってしまうことの回避が行えるでしょう。
< 2017年9月 代表取締役 内山 三朗 記 >