意識改革のカギとなる“自己一致”

これまでのコラムで、当事者が“自覚するように”また“自覚できるように”関わることの大切さを述べてきました。今回のコラムでも更にその重要性について解説を行います。
※その解説の前に少しカウンセリングの流派について説明をします。カウンセリングには様々な流派があり、今回の解説ではカウンセリングにおいて代表的な流派である来談者中心療法を基に解説を行います。

カウンセリング(来談者中心療法)の世界において、“正しく自身を自覚する状態”“自覚できる状態”“自己一致の状態”といいます。そしてこの“自己一致の状態”の逆の状態を“自己不一致の状態“といいます。

自己一致の状態とは
自己概念に柔軟性を持ち、自分の経験や感情を否認や歪曲することなく、ありのままに受容すること。この状態にいる人を“機能する人間” “開かれた人間”という。

自己不一致の状態とは
自分の本当の経験に対して嫌悪や拒否をし、自己概念が脅かされ、混乱して、不安や緊張が高まる状態。

否認とは
自己概念と一致しない経験。自分が本当は経験していることなのに、無視したり、ありのままに受け入れられない経験。

歪曲とは
経験と一致しない自己概念。自分が本当には経験していないことをそうだと思い込んだり、そうあるべきだと決めつけたりすること。

来談者中心療法では、この“自己不一致の状態”から“自己一致の状態”へ変化させることを目指します。繰り返しとなりますが、自分自身を正しく認識すること、そして自分自身を受け入れ、向き合えることをクライアントの目指す姿(目標)とします。なぜならば、来談者中心療法では『人は他の生物と同じように、自らを維持し、強化する方向に自分自身を発展させようとする自己成長力が備わっている。そして自律性、自己実現への傾向や良くなる力が人には内在している。』と考えるためです。つまり正しく自分自身の問題や課題が認識できれば、あとは自分なりに解決することができるということです。

私自身、自分のことは自分が一番わかっているつもりでいます。しかし意外と自分のことを知らなかったり、ありのままの自分を受け入れることができず、目を伏せたくなることもあります。恐怖や不安なくありのままの自分に向き合うことができれば、身の回りの問題も解決に向かい、自己成長にもつながると感じます。

以上のようにカウンセリングを知ることは、自分自身に対して、そして周囲の人への関わり方に対して、力の入れどころや自身の役割について気づかされることが多々あります。良かれと思ったことが自分自身にとって、そして周囲の人に対して逆効果とならないようにしたいものです。

5回に渡って『企業活動で活かされるカウンセリング技術』について解説してきました。まだまだ十分にお伝えできていない点もあります。ただ一番お伝えしたかったことは、職場や日常生活においてカウンセリング技術を活かせる機会は多々あるということです。ひょっとすると皆さんが今、悩んでおられることも解決できるかもしれません。多くの企業で問題視されている意識改革の糸口もカウンセリングには存在します。

もちろんすべてのことがカウンセリングのアプローチで改善できるものではありません。状況に応じて様々なアプローチを使い分けることが必要です。私共がコンサルティングを行いながらもカウンセリングやコーチングなど、他のアプローチを折衷的に取り入れている所以がここにあります。

次回のコラムでは問題発見力“気づき力”について解説を行います。

< 2017年3月 代表取締役 内山 三朗 記 >

上記コラムに関連する研修<研修パンフレット>

研修名:良好な職場の人間関係構築のためにのコミュニケーションの活性化<職場の“生産性向上”のきっかけ作り>