IE手法を活用する“目的”について
前回まで科学的分析手法であるIE手法について解説をしてきました。そしてこのIE手法は製造業で実践され、発展してきた手法でありますが、その実践的な活用は減少傾向でありました。しかし、近年、再びその重要性が見直され、再導入する企業や製造業以外の業界でも新たに導入する企業が増えてきています。
但し、その実践活用に至るまでにはいくつかの課題があるようです。私の身の回りでも、『IE手法の外部講習を社員に受講させたが、職場内での実践活用に至らない』とクライアントより相談を受けることが多々あります。
今回のコラムではその原因について、IE手法を習得しそれを活用する目的や意義に着目しながら、解説を行います。
IE手法の目的とは
1.工程での生産の「実態」を系統的に把握すること
2.「ロス」や「ムダ」などの事実をできるだけ早く見つけること
3.2と3により、工程での「改善」や「標準化」を系統的に実施できること
4.上記の結果、「人」「機械」「材料」「エネルギー」を効率よく使用することができるようになること
上記の内容の通り、IE手法活用の目的は、経営成果を出すこと、そしてそのために「人」「機械」「材料」「エネルギー」を効率よく使用し、生産性を向上させることが上位の目的です。更にその上位の目的を果たすために職場にある「ロス」や「ムダ」といった問題を見つけ改善しなければならず、その問題を見つけ出すために、現状と目標を具体的に、そして定量的に分析することが下位の目的となります。
しかし、上記の目的を満たせば、職場内でIE手法が活発に活用されて、経営成果につながるかというと十分ではありません。最も重要で意識すべき目的が他にあります。そのことが抜けてしまうことがIE手法の実践活用に至らない原因であると感じます。
最も重要な目的とは
コミュニケーションのツールとしてのIE手法活用
IE手法の活用により、職場の問題を自分自身が理解できれば終わり、また取り敢えず職場の問題が見えるようになれば、それで終わりではありません。職場内で問題を共有するために、IE手法を活用することが最も大切なことです。自らが気づき、周囲の人に伝え気づかせる。また部下自身が問題に気づくようにIE手法を活用して働きがける。そのための“コミュニケーションのツール”として活用するところにIE手法の価値が出てきます。決して、半年や1年に1回の発表資料にまとめるだけのものであってはいけません。
よって職場内での“共通言語”としてIE手法が活用できるようにするためにも、“より多くのメンバーを一斉に教育する”のがより良い方法になるでしょう。一部のメンバーを外部研修に参加させるだけでは不十分です。更にIE手法は自社に応用して初めて意味を成しますので、“どのように応用するのかの教育”を受けておく必要があります。世間一般的な事例を基にした内容の外部研修だと、一般的なことの理解で終わってしまう可能性が大いにあります。
以上の点を考慮してIE手法を導入されると職場内のコミュニケーションも活性化され、経営成果は確実に創出されるでしょう。また問題認識のあり方についても成功体験を得ることにより、問題発見力(気づき力)も確実に向上することでしょう。
次回と次々回の2回のコラムでは、学業において授業や試験で多くの問題に向き合い、解いてきたにも関わらず、企業内で問題発見力(気づき力)について問題視される原因について解説を行います。
< 2017年4月 代表取締役 内山 三朗 記 >
上記コラムに関連する研修<研修パンフレット>
研修名:現場力を鍛えるIE実践研修
研修名:問題発見力(気づきの感度)向上研修<改善活動成功のカギ>
研修名:問題発見力(気づき力)の高め方研修<管理者の関わりが大きく影響>