標準化のポイント②
今回は前回に続き、下記の“標準化のポイント”について解説を行います。前回は標準化ポイントの『1.ルール(基準)を決める』と『2.ルール(基準)を決める際は、現場の衆知を盛り込む』について解説を行いました。今回は、『3.決めたルール(基準)を理解・納得させる』について説明します。この標準化ポイントの3.のあたりから、企業間に取り組みの差が現れ、標準化が成功するかどうかの岐路となっています。
<標準化のポイント>
1.ルール(基準)を決める
2.ルール(基準)を決める際は、現場の衆知を盛り込む
3.決めたルール(基準)を理解・納得させる
4.頭で理解したルール(基準)を守れるようにする
5.定期的にルール(基準)は見直し、1.に戻る
3.決めたルール(基準)を理解・納得させる
決められたルール(基準)を理解・納得させるとは、標準化ポイントの1.と2.で決めたルールを“教育する”ことを意味します。この“教育”に似たことばとして、“訓練”がありますが、この“教育”と“訓練”それぞれの意味やその違いをご存知でしょうか?“教育”とは、頭で理解し、納得させることです。 これに対して“訓練”とは、頭で理解したことを実際に体を動かし、経験を基に体得させることです。ゴルフに例えると、グリップの握り方、ボールや地形に対してのスタンス、そしてスイングの方法を本や動画を観て理解したとしても、ボールを実際に打ってみて、真っ直ぐ飛ばせるかどうかは別の問題となります。つまり、教育により頭で理解しているだけでは不十分で、実際にルール通りに実行できるかは訓練を通して評価し、再教育や継続的に経験を積んで習熟していくことが必要となります。次回のコラムで解説します『4.頭で理解したルールを守れるようにする』はこの“訓練する”ことを意味しています。
今回のコラムでは更に、教育段階で浮上してくる問題をいくつか紹介します。
これから紹介する問題の発生は、標準化のポイントの1.と2.でまとめた標準書類の見直しなど、振り出しに戻ったり、標準化そのものが形骸化するなど、標準化の推進を危うくします。冒頭にも記載しました企業間での差が生まれる原因となります。
<教育段階で浮上してくる問題①>
人による業務の進め方や手順を統一させることができない。
本来は業務や作業内容、そしてその手順といったルールがあり、そのルールを新しく業務に携わる人に伝え、ルールを守らせることが標準化の手順となります。しかし、既に各担当者なりの業務の進め方や手順があり、それを標準化するケースも多くあります。このような状況で人による違いを統一化しようとしても、現場の理解・納得を得られないことが多々あります。
ここでの解決策の一つとしては、2.でも記載しました現場の“衆知”を盛り込むこと、そして“Know Why”の“なぜ”を明確にしておくことです。安全、品質、効率面で“なぜ”現在の業務の進め方や内容なのかを追求することです。
それでいて統一が難しい場合は、何か別の原因があるはずです。その原因を追求していくとことが新たな改善につながるでしょう。
<教育段階で浮上してくる問題②>
教育に標準書類が活かされていない。又は、活かすことができない。
教えられる側の悩みによくあるのが、教える人によって、教える内容が異なり混乱する。これは標準書類が整備されていても、このようなことが発生します。それはなぜでしょうか?
その理由の一つとして、標準書類を基に教育することが想定されていないことや、教える内容そのものの標準化はできていても、それを活用してどのように教育を行うかまでの標準化を行わず、現場任せになっているからです。その結果、標準書類を活用せずに、口頭だけで教育者の経験や考え方に依存した教育となってしまっているのです。
ここでの解決策として、教育の標準化を行うことです。そして、最も大切なことは標準化を開始する時に、標準化の目的、将来のイメージを持っておくことです。何も考えずに標準書類をまとめることが標準化と位置づけられてしまうと、上記のようなことが発生します。私がよくコンサルティング支援の中でお話しするのは、標準化には“構築段階での目的”と“運用段階での目的”を区分し、それぞれを明確にするように説明しています。詳細は割愛しますが、要はゴールのイメージを持って進めることが大切であるということです。この点は標準化以外にも共通することで、手段が目的化しないための手立てとなります。
その他、教育段階で浮上してくる問題があり、それらの阻害要因を克服することが標準化を最後まで完結し、本来の効果へと導きます。多くの企業で標準化が形骸化してしまう理由は、これらの阻害要因を事前に予測できず、対策が後手に回ることで標準化の推進が失速しています。
続きは次回のコラムにて解説を行います。
上記コラムに関連する研修<研修パンフレット>
研修名:標準化活動の活性化研修<現場で“実際に活かされる”標準類の整備>